将来的に1階だけで生活が成り立つように、というのも望まれた要件であった。1階にはLDK＋パントリー、寝室、水まわり、納戸を。2階にはシアタールームと個室、ゲストルームという構成とした。
玄関、リビング、ダイニングは天井高さを３.1mの平家とし、そのほかの部屋との天井高さの緩急が変化をもたらし豊かな断面空間になっている。
階段を上がると広いホールに。ここはセカンドリビングとして、ある時はゲストルームとして使えるようにと計画したものだが、出来上がってみるとまるでシアタールームのホワイエのような場ができた。ご家族が自由な発想で楽しく過ごされるだろう。
1階にはLDKの一部に中庭を設けている。南北に長い建物であるため、明るい日差しを得られるようと意図したものである。その庭に沿うようにスキップフロアと階段を配した。スキップフロアはライブラリースペース。ここだけは床材をサイザル麻敷きにした。
北庭は浴室と寝室に面した専用庭。浴室には深めの庇（ひさし）を出し、外壁を立ち上げることでプライバシーを確保。近隣住戸の窓の高さを考慮した計画をすることで、視線を気にすることなく入浴できる庭になった。
主庭は「鳥のくる庭」に。とっておきの水飲み用の鉢を据える予定だ。庭と共にある家として計画した住宅である。庭がどのようにこれから育っていくのか、今からとても楽しみである。
内装について。フローリング材や造作家具、キッチンの面材にはブラックチェリー材を使っている。また、階段段板や、南の庭にしつらえた出窓の四周の窓枠は、厚み４cmの無垢のブラックチェリー材を使っている。この窓台は愛犬のお昼寝台兼物見台になりそうだ。
また、ドッグゲートをキッチンと庭につくっている。犬と共に暮らすための仕掛けをいくつか設計できたことも、この家の計画で味わえた楽しい経験の一つである。